クロワッサンシカゴのねごと

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この世界の片隅に、いる

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こうの史代の同名漫画を原作とする劇場アニメーション映画。2016年11月12日公開。

日本映画専門チャンネルにて「この世界の片隅に」が放送されました。上映当時は気にはなりつつもスルーしてしまったので今回が初視聴。見逃してしまった方も過去作含めて再放送するようなので、チェックしてみるとよいかも。

「すずさん」という1人の人間

片渕監督の作品は「マイマイ新子と千年の魔法」を鑑賞したことがあって、今回観た「この世界の片隅に」にも変わらずに共通する「作家力」が素晴らしいと感じた。ジブリの高畑監督の作風とも近いものを感じる。

この映画では、「すずさん」という1人の人間を、観ている側に信じ込ませることに注力していて、のん(能年玲奈)の声、アニメーションの演技を含めて、それを見事に成功させている。ゆったりとした動作に中割を割くことで、日常の動作1つ1つに視覚的快楽が生まれ、『そこにいる』という存在感を強く受ける。そして、その1人の人間である「すずさん」が、嫁ぎ、笑い、泣き、怒り、葛藤し、絶望し、再起する、という誰にでも訪れるであろう普遍的な物語を歩む。それだけで感動する。これは言葉にはできないもの。

「戦争」というのはそこに割って入ってきたものに過ぎない。『戦争の時代を生きた人々』というのは誤った表現だったのかもしれない。人々の暮らしの中に『戦争』という大き目のイベントがあったのだろう。だから、今ぼくらが生きる時代に、特に昨今の世界情勢を見るに、これは他人事などでは決してないと思わされる。「戦争」は正義と正義のぶつかり合いだ。敵味方どちらかが良い悪いの問題ではない。そういう意味では、戦争賛美や反戦イデオロギーを明確に歌っていないこの作品の立ち位置はとても貴重であるし、見る側の解釈に委ねられている。

すずさんは絵を描くことで自分の感情をコントロールしているが、対空砲火が迫っている状況で「今、絵具があれば」なんて考えてしまう子なのです。ですが、これはものを作る身としてとても共感できるし、不謹慎であるとわかりつつもカタルシスを感じ、目の前の情景をこの世ならざるものとして美しく捉えてしまう場合があります。この台詞は映画オリジナルらしいのですが、すずさんの感性を表したよいアレンジだと思います。この台詞により、すずさんはいわゆる"普通"の女性ではないと感じる方もいるかもしれないですが、そもそも"普通"なんてものは存在しませんので、これがすずさんという人間なのです。こんな人間いないよ、と言われたらそれでお終いですが。

言葉にできないもので胸が満たされる

特に好きなのは、玉音放送を聴いたすずさんが感情を吐露するシーン。それと白鷺を追いかけるシーン。もちろんそれらは前半のシーンを踏まえた上でのものになっているので、結論全編無駄なく最高ということになる。これらのシーンは泣いてしまう。でも悲しいから泣いているのではなくて、言葉にできないものが溢れてくるから涙が出る。同じく作品を作る身として嫉妬してしまうね。

鑑賞前に思っていたよりも全編笑える話になっていて良かった。この時代設定でこんなにも微笑ましい構成になっている作品は珍しい。4コマオチのようにパッパとリズムよく展開するので日常シーンも飽きずに見ることができる。絵を描いていたら汽車に乗り遅れたり、ドンくさい体裁の癖に間諜だと疑われ家族に笑われたり、妊娠したかと思ったらそんなことはなかったり、基本的にすずさんの天然キャラが微笑ましい。そんな日常があるからこそ、物語後半は辛い。

音楽は言わずもがな最高である

僕は「マイマイ新子と千年の魔法」以前からコトリンゴのファンであるけれど、今作もドハマりしていて何も言うことがない。「悲しくてやりきれない」や「隣組」のカバーをはじめ、「みぎてのうた」「たんぽぽ」と外れがない。この方の歌声はそれだけで催涙効果があるので卑怯だ。最高だよ。

大人向けの映画だと思う。「火垂るの墓」よりも「この世界の片隅に」の方が絵柄も可愛いし、子供に見せても問題ないとは思うけど、「火垂るの墓」はある種哲学チックな物語に見える反面、本作は現実感が強烈で、ある程度教養も必須になってくる。歴史や文化をある程度知らないとおもしろくないかもなーとは感じた。海外でも人気なようだから、そんなことはないんだろうけど。気にすることはないのかもしれない。万人におすすめできる作品です。

あとはもっと広まることを祈るばかり。事務所がどーだこーだとか聞くと悲しくなってくる。是非地上波でも放送してほしい。とりあえず、遅ればせながらブルーレイ買います!

ボーカルのミックス処理

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ボーカルの処理どうしてますか?

ミックスをしていて一番気にするのがボーカルの処理です。ピッチ補正やディエッサー、コンプレッサーなどを含めると他のトラックよりも多くのプラグインを挿すことになります。そんな中で個人的に愛用しているのがWavesの「Maserati VX1」。

「Tony Maserati Signature Series」は買って絶対に損はありませんので安くなっているうちに持っておくことをおすすめします(体験版試してからの方がよいと思いますが)。僕のようにミックスが不得手な人間にはもってこい。プリセットひとつでサウンドも音圧もクオリティが跳ね上がるので迷ったらこれ挿しておけば問題なしです。

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Waves Horizon」と「Tony Maserati Collection」

ピッチ補正は「Pitch Correction(Logicのみ)」とか「Melodyne」とか。ボカロでもこれを挿さないと音程が気持ちよくないのでピッチ補正はマストです。

Wavesプラグインだと「Renaissance Compressor」と「Vocal Rider」もおすすめです。「Renaissance Compressor」はC1とL1が組み合わさったようなもので、サイドチェインを活用しながら3dbゲインリダクションする程度かけます。基本的にはプリセット少し弄る程度。ARCに設定してElectroとOptoは好み。Warmに設定しておくと倍音が足されます。

「Vocal Rider」はボーカルの音量を自動で調整してくれるのでオートメーションを一々描く手間が省けます。これもベーストラックなどからサイドチェインを受けさせます。あまりレンジ広げすぎると逆効果になる。さり気なく使う。ボーカルトラック通して音量差が激しい場合は「MV2」でLow(=小さい音)をあげてあげます。やりすぎるとダイナミクスが失せます。ボーカル以外でも音量差が激しい場合は使えます。

そして、最後を飾るのが「Maserati VX1」。よさげなプリセットを選んでちょっと弄れば完了!僕の楽曲のボーカル処理は大半がこれで終わりです。完成したボーカルトラックをセンド送りしてリバーブとステレオディレイをかけてあげます。リバーブは「Space Designer(Logicのみ)」とか「Renaissance Reverb」とか。ディレイはその都度DAWに付属してるものです。

歌ものはボーカルが主役なのでボーカルが聞き取りやすいように頑張っています。いろいろ言ってますが、うまくミックスできているかどうかはわかりません(汗

それでは。

新PCをお迎えしました

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新PCをお迎えしました。数年ぶりのWindowsなので慣れるまではiMacと同時使用かな。消費電力が大きめなのでそこだけは気にかけないとですが。

決めてはCPUとGPU

今回購入したのは「NEXTGEAR i670PA1-SP2」。デフォルトですでに20万を超えてしまっているけど、CPUにインテル® Core™ i7-8700K プロセッサーを採用していて、グラフィックスにGeForce® GTX 1080 Ti (11GB) 」を搭載しているのを探していたのでこれで行こうと決めました。

8700Kは、コア数6の12スレッドの新しめのCPUらしいので性能はとても良いようです。最初はコア数10のCPU(「Core™ i9-7900X」とか)で行こうかとも考えていたんですが、コアが増える分ベースのクロック数が下がってしまうので躊躇っていました。コア数が増えてもソフトが追いついてきてくれないと宝の持ち腐れ状態になってしまう。8700Kはベースもブースト時も比較的高いクロック数なので良いなと。

グラフィックスは、GTX 1080のタイタン(NVIDIA GeForce GTX1080Ti / 11GB」)。憧れていたので今回採用することができて嬉しいです。3Dゲームをどっぷりやることはないですが(持ってるの「Cities: Skylines」くらいだし)、動画の編集や書き出しの効率がよくなればいいなと思っています。Photoshopで高解像度のレイヤー重ねまくるのですが、これはグラボ関係あるのかな?

メモリもSSDもガン積み

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メモリは、64GB(「16GB×4 ( PC4-21300 / DDR4-2666 ) / デュアルチャネル」)。今使用しているiMacはデフォルトで8GBだったんですが、今は32GBのマックスを積んでいます。だけど、それでもPhotoshop等を立ち上げるとすぐに90%以上を使い切ってしまいます。なのでちょっと高いけど、倍の64にしました。

SSDは、1TB+480GB。1TBのほうはM.2接続というSSDの中でも超高速のものを採用しています(SAMSUNG SM961 / M.2 PCI Express x4 接続」)。これ体験したかったので実際に作業するのが楽しみですが、数字だけ見るとまじで爆速になります。ちなみにパソコンの起動が20秒くらいになってめちゃくちゃ快適。

カスタマイズで積みすぎて…

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そんな盛り盛りなスペックにしてしまったので今度は発熱と電源が気がかりになってきます。パソコンで一番大事なのは電源なのでここは妥協したくないので、「850W 電源 ( 80PLUS(R) PLATINUM)」というものに変更しました。発熱はファンがうるさくなりそうだし、安定性も考えて水冷クーラーに変更しました(「水冷CPUクーラー」)。水冷は初なので良いのか悪いのかはまだわからないです。水冷でもファンの音はします。

という感じで色々とカスタマイズでくっつけすぎてしまい、価格が40万超えてしまいました。デフォルトの倍。でもiMac Proの90万超えに比べたら半額以下だし、分相応スペックに落ち着いているはずなので良いのです。このスペックも使いこなせるか謎ですが…。

モニターは4K27インチ

ディスプレイは、LGの27インチモニター(「LG モニター ディスプレイ 27UK650-W 27インチ」)。4KHDRのモニターが欲しかったので、ちょうどよく新機種が出るLGのものにしてみました。この機種はスピーカーも付いています。リフレッシュレートがもっと高いモニターも体験してみたかったけど、総じてどれも値段高いし4K未対応なので諦めました。さすがに4K表示では細かすぎるので150%程度拡大して表示しています。

LG モニター ディスプレイ 27UK650-W 27インチ/4K/HDR対応/IPS非光沢/HDMI×2、DisplayPort/高さ調節、ピボット対応

LG モニター ディスプレイ
27UK650-W 27インチ
4K/HDR対応/IPS非光沢/HDMI×2、DisplayPort
高さ調節、ピボット対応

  • 出版社/メーカー: LG Electronics Japan
  • 発売日: 2018/01/26
  • メディア: Personal Computers

使ってみないとわからない

そんなこんなで理想的な環境は整ったわけですが、Macの設定を移行したり、Windowsに慣れたりで、快適に使用できるようになるのは数週間はかかりそうですね。まずはいろいろ試してみたいと思います。

試しにCubaseで重たいプラグインを立ち上げてみると、iMacの頃は1つしか立ち上げられなかったプラグインが30以上立ち上がるようになりました。新DAWに慣れる必要はありますが。頑張ります。

おまけ

今まで使用していたiMacと今回購入したNEXTGEARとのざっくりスペック比較です。細かいところは割愛しています。iMacもまだまだ使えるね。

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その他購入したもの

エレコム 有線コンパクトキーボード パンタグラフ式 薄型 ホワイト TK-FCP097WH

エレコム 有線コンパクトキーボード
パンタグラフ式 薄型 ホワイト
TK-FCP097WH

  • 出版社/メーカー: エレコム
  • 発売日: 2018/01/05
  • メディア: Personal Computers

 Macのキーボードのタッチに近いものを探していてこれに行き着きました。矢印キーとかは慣れが必要ですが、タイプしてる感じは近いのでMacのキーボードに慣れてしまっている方はおすすめです。IMEの設定で変換/無変換でかな/英数を切り替えられるように設定しています。

YAMAHA ウェブキャスティングミキサー 6チャンネル AG06

YAMAHA
ウェブキャスティングミキサー
6チャンネル
AG06

  • 出版社/メーカー: ヤマハ(YAMAHA)
  • 発売日: 2015/05/31
  • メディア: エレクトロニクス
 

 USBで接続できるオーディオインターフェースが必要になったので購入しました。値段が手頃なのに欲しい機能はほぼほぼ備わっているので良いですね。スピーカーとヘッドフォンどちらにもアウトさせているのでミックスの時に切り替えが楽で便利です。

それでは。

Kodomo Rengou を 聴きました

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People In The Box の新譜「Kodomo Rengou」を聴きました。フルアルバムのリリースは3年振りだそうで(そんなに前だっけ)、初期の頃から聴いている身としてはとても楽しみにする反面、いきなり路線変更とかするんではないかと考えてしまったりした。別に路線変更してもいいのですけどね。でも一周聴いてそんな不安は吹っ飛んだ。これはいつも通りのピープルでした。洗練されていたサウンドがさらに洗練されていて「は?」みたいな高クオリティだった。

アレンジメントやメロディラインに幅が生まれ、初見さんバイバイみたいな変態楽曲も含めて、やっぱりこのバンドはおもしろい。聴いていてワクワクするし創作意欲もどんどん湧いてくる。「町A」や「デヴィルズ & モンキーズ」が特に好み。口ずさめるメロからは遠のいているけど、ラインのセンスは唯一無二。願わくばもっと有名になってもらいたいところだが。。。

MVで公開されているのは「かみさま」。アルバムのテーマは「こども」だと思っていたので、この曲の歌詞を読んでいると、子供を見守る親の姿を想像する。「君はすごい!君はできる!」と甘やかすような言葉を投げかけてしまうのも仕方がないのかもしれない。というか「おいしい夕食作って待っているから、いってらっしゃい」なんて、ズルすぎる!

「こども」がテーマと思って歌詞を読んでいくと、「町A」は押し入れとかでひとり遊びしてる子供。「町を匿う毛布」「どうかぼくを放っておいてちょうだい」なんかがそれを連想させる。子供のころは妹と段ボールで秘密基地っぽいの作って遊んでいた。レゴブロックで架空の町を作ったりして遊んだりもした。誰しもが通る道だと思う。大人になった今でも「Cities:Skylines」などで街作って遊んでます。

世界陸上」は合いの手の『はい、はい、はい』が特徴的。試験の採点、電話対応、レジ打ち、ストップウォッチ。いろいろ連想するけどどれも競争社会を表している。リズムも相まって急かされてる感が強い。我々は生まれた時から競争するのが好きな生き物のようです。

ラストの「ぼくは正気」は"気力を失い甘えに走った子供"あるいは"大人になることを決めた子供"。親という神様(=太陽?)の元を離れ、暗い森へと踏み分けいっていく。それが前向きなことなのか後ろ向きなことなのかはわからない。歌詞的には後者な気がしてしまう。そう考えるとジャケット写真は牢獄のようにも見える。

Kodomo Rengou

Kodomo Rengou / People In The Box


  • 01. 報いの一日 02. 無限会社 03. 町A 04. 世界陸上
    05. デヴィルズ&モンキーズ 06. 動物になりたい
    07. 泥棒 08. 眼球都市 09. あのひとのいうことには
    10. 夜戦 11. かみさま 12. ぼくは正気